録画・配信ソフトであるOBS Studioには音声を加工できる機能として『音声フィルタ』と呼ばれるものがあります。
この機能にはマイクから入ったノイズを消せるエフェクトや音割れを防止できるエフェクトなどが入っており、設定することで音声をより聞き取りやすくできたりします。
最初から無料でそれらの優秀なエフェクトたちが使えるのですが、無料で公開されているプラグインを導入することでエフェクトを追加することも可能です。
そこで今回はOBSの『音声フィルタ』に追加できる、おすすめの無料VSTプラグインエフェクトを種類別にご紹介します。
なお、音声フィルタにVSTプラグインを導入するやり方はこちらの記事で紹介しています。WindowsだけでなくMacへの導入方法も併せて記載しているので、よければ参考にしてみてください。
●この記事でわかること●
・OBSの音声フィルタ機能で使える【無料】で【おすすめ】のVSTプラグイン
リバーブ
リバーブとは【残響】のことで、お風呂の中で歌うと音が響いたり、コンサートホールで演奏すると音が広がったりしますよね?リバーブとはその空間の響きをシミュレーションしたエフェクトです。
『カラオケのエコー』に似た音声に加工することができるので、歌配信やタイトルコールのアクセントとしてマイク音声にかけることもできます。
OrilRiver – Denis Tihanov
『OrilRiver』はDenis Tihanovによってリリースされた無料で使えるリバーブプラグインです。
安っぽくない音で、操作できるツマミやフェーダーが多いことが特徴です。
そのため使い方さえ理解できればこだわり抜いたサウンドも作りやすいのが『OrilRiver』です。
プリセットという【すぐにそれっぽい設定を呼び出せる】機能もついているので、細かなパラメーターの操作ができるか不安といった方も安心して使えます。
以前OrilRiverの導入方法に関する記事を書きました。
扱いの簡単さ | |
音の良さ | |
音作りの幅 | |
おすすめ度 |
Space Knob – Abletunes
『Space Knob』は難しい機能を全て省き、たった一つのノブだけで良い感じのリバーブを得られる無料のプラグインです。
個人的には音がチープで少し雑な響きという印象を受けました。
ただ、一つのノブしかないので誰でも簡単に音作りができる点は魅力的だと思います。
少しでもこだわりたいタイプなら不向きのプラグインでしょう。
扱いの簡単さ | |
音の良さ | |
音作りの幅 | |
おすすめ度 |
ValhallaSupermassive – Valhalla
『Valhalla Supermassive』はディレイとリバーブ両方の機能を備えた無料プラグインです。
最初に紹介したOrilRiverほど細部まではいじれないですが、音の良さに定評があり「なんで有料じゃないんだ」と言ってる人もちょくちょく見かけるほど完成度の高いプラグインです。
雑さがなく幻想的な響きですがどこかアナログチックなサウンドだと感じました。
サウンドに関しては好みの問題ですね。
扱いの簡単さ | |
音の良さ | |
音作りの幅 | |
おすすめ度 |
コンプレッサー類
コンプレッサーとは大きい音を圧縮するエフェクトのことで、指定の音量を超えた場合に音を押さえつけることができます。
きちんと設定ができればマイクに向かって大声を出しても音割れを防ぐことができますが、単純に音量を下げるのではなく音を圧縮するため強くかけすぎると音の輪郭が消えてしまい、逆に聴き取りにくい音になってしまいます。
OBSには最初からコンプレッサーが入っていますが、直感的に操作しづらい見た目で初心者向きではないと感じていたので、OBSのコンプよりも使いやすいものを集めました。
LoudMax – Thomas Mundt
『LoudMax』は2つのフェーダーだけで音割れを防ぐことができる無料のマキシマイザープラグインです。
コンプレッサー類はかかり具合が分かりにくいものが多いですが、ゲインリダクションメーターが付いているのでどれくらい音を圧縮してるかが一目でわかります。機械類が苦手な方でも直感的に操作しやすいはずです。
上のフェーダーでコンプの効き具合、下のフェーダーで音量を下げることができます。めちゃくちゃシンプル。
CPUへの負担もかなり少ない点もおすすめポイント!
音を大きくする機能はついていないので、音量が小さいと感じる場合はこのプラグインの上に音声フィルタのゲインを立ち上げてそちらで調整しましょう。
LoudMaxの導入方法や操作方法は下の記事で解説しています。
扱いの簡単さ | |
音の良さ | |
音作りの幅(配信使用ではあまり重要ではない) | |
おすすめ度 |
SAFECompressor – Semantic Audio
『SAFECompressor』はOBSに内蔵されたコンプとほぼ同じ機能が付いている無料プラグインです。
コンプのかかり具合を視覚的に捉えることができるので、OBSのコンプが使いにくくて困っている方に向いているプラグインではないでしょうか。
OBSと表記が違うのでパッと見た感じ別の機能がたくさんついてるように感じるかもしれませんが、機能の差は以下のとおりです。
OBSの表記 | SAFECompressorの表記 | 効果 |
---|---|---|
比率 | Ratio | 閾値を超えた音量をどこまで圧縮するかを決める圧縮比率。(高設定にすると極端に音が潰される。4.0:1くらいならハズレない。) |
閾値 | Thresh | コンプレッサーのオンオフを決める境目となる音量。数値を低くすると効きやすくなり、低くしすぎると常にオンの状態になる。 |
アタックタイム | A | 音量が閾値を上回ってコンプレッサーが効き始めてから、どのくらいの速度で圧縮が完了するか。 |
リリースタイム | R | 音量が閾値を下回ってコンプレッサー緩み始めてから、どのくらいの速度で無圧縮の状態になるか。 |
出力ゲイン | Gain | コンプレッサーを通した後の音量を調整する項目。 |
サイドチェーン/ダッキングソース | ///なし/// | OBS内の別のソースの音量をトリガーとしてコンプレッサーのかかり具合をコントロールする項目。 |
///なし/// | Knee | コンプレッサーのオンオフをどのくらい極端にするかを決める項目。 |
扱いの簡単さ | |
音の良さ | |
音作りの幅(配信使用ではあまり重要ではない) | |
おすすめ度 |
W1 Limiter – George Yohng
『W1 Limiter』は音を比較的クリアな状態で保ちながら音割れを防ぐことができる無料のリミッタープラグインです。
優秀な有料プラグインを大量に開発しているWAVES社のL1、L2リミッターを模して作られたとされる無料のプラグインなのですが、完成度が非常に高くサウンド面においても遜色ないです。※クリアなサウンドなのでコレを挿したからといって音が良くなるわけではありません。音があまり劣化しないということです。
3つのフェーダーとボタンが1つ付いていますが、OBSで自分の声の音割れを防ぐだけなら何もいじらなくていいです。とりあえず挿すだけで音割れを大幅に減らすことができます。
音を大きくする機能はついていないので、音量が小さいと感じる場合はこのプラグインの上に音声フィルタのゲインを立ち上げてそちらで調整しましょう。
W1 Limiterの導入方法や操作方法は下の記事で解説しています。
扱いの簡単さ | |
音の良さ | |
音作りの幅(配信使用ではあまり重要ではない) | |
おすすめ度 |
エキサイター
エキサイターとは主に高音域を増幅・強調させるプラグインのことで、これにより音が前に出てきたり、音をきらびやかにできたりします。
配信をする上で必ず必要になるわけではありませんが、歌配信をする際に適用すると自分の声をより明るいサウンドにすることが可能です。
歌配信だけでなく、籠もってて聞き取りにくい声の方や、マイクを通すと声が野太くなり聞き取りにくくなってしまう方もエキサイターを使ってみると良い結果が得られるかもしれません。
Fresh Air – Slate Digital
『Fresh Air』はシンプルなUIで、明るく埋もれない音に仕上げてくれる無料のプラグインです。
MID AIRは中音域を、HIGH AIRは高音域を前に出すツマミとなっています。
かけすぎると荒くザラザラ・シャリシャリした耳が痛くなるようなサウンドになってしまうので注意が必要です。
Slate Digitalは有料プラグインをたくさん出している企業なだけあって、サウンドはしっかりしているし見た目もオシャレですね。
シンプルで使いやすいのにプリセット(すぐにそれっぽい設定を呼び出せる)機能もついているので、細かなパラメーターの操作ができなくてもも安心して使えます。
※2022/7/26時点、一部の環境でインストールできない不具合が発生している模様。
扱いの簡単さ | |
音の良さ | |
音作りの幅 | |
おすすめ度 |
La Petite Excite – Fine Cut Bodies
『La Petite Excite』もまた上で紹介したFresh Airと同じで、明るく埋もれない音に仕上げてくれる無料のプラグインです。
このプラグインではLOWで低めの音を、HIGHで高めの音を前に出すことができ、それと同時に音量の調整もできます。
Fresh Airと同様でかけすぎると荒くザラザラ・シャリシャリしたサウンドになってしまうので注意が必要です。
扱いの簡単さ | |
音の良さ | |
音作りの幅 | |
おすすめ度 |
イコライザー
イコライザーとは特定の周波数帯域の音を大きくしたり小さくすることで音の質感をいじるプラグインです。
配信におけるイコライザーの役割はそれほど重要なものではないので、使っている人は少ないと思います。
一般的には映画・音楽・ゲームの迫力を出すために少し低めの音を強調するために使っている人が多いと思いますが、配信や録画時に迫力が欲しいことってあんまりないので重要ではないでしょう。
マイクの性質上音が篭ってしまう場合に高音をブーストしたり、その逆で低音をブーストしたりして聴きとりやすい音を作るために用いると良いでしょう。
無線や電話・ラジオを通したときのような音声も作ることができるエフェクトです。
Nova – TDR
『Nova』は視認性に優れていて尚且つ豊富な機能を持つ無料のパラメトリックイコライザープラグインです。
操作できる帯域は4箇所だけとイコライザーの中では少ない部類ですが、配信で使う分には事足りるでしょう。
何よりリアルタイムで鳴っている音が視覚化されるので、直感的に操作しやすい点が魅力的です。
NOVAには無料のイコライザープラグインとしては珍しい『ダイナミックイコライザー機能』がついていてそれが目玉機能となっているのですが、配信でNOVAを使う分にはこの機能はオフで良いと思います。(扱いが難しい機能なので)
プリセット(すぐにそれっぽい設定を呼び出せる)機能もついているので、細かなパラメーターの操作ができるか不安といった方も安心して使えます。
扱いの簡単さ | |
音の良さ | |
音作りの幅 | |
おすすめ度 |
ピッチ加工(ボイスチェンジャー)
この記事で紹介するピッチ加工プラグインは音痴な歌を直すものではなく、マイクの音をそのまま高くしたり低くしたり、モザイクをかけている人が喋ってる時の声みたいな音を作ることができるプラグインです。
テレビなどでたまにながれる“事件に関与した人の加工された音声”みたいな感じの音声を作ることもできます。
Graillon2 – AUBURN SOUNDS
Graillon2は通した音声のピッチを低遅延で加工できるプラグインで、無料版と有料版の2種類があります。
このプラグインには複数の機能が付いていますが、無料版で使えるのは【Pitch Shifting】と【Pitch Correction】の二つの機能だけです。
ただ、配信で使う分にはこの二つの機能だけで十分だと思います。
OBSへ導入する方法や、無料版の使い方などを以下の記事で解説しています。
扱いの簡単さ | |
音の良さ | |
音作りの幅 | |
おすすめ度 |
※”音の良さ”に関してはボイスチェンジャー系のプラグインがそもそも全体的にあんまり良くないので、このプラグインが特別低いというわけではないです。
コーラス
コーラスとは原音を複製してわずかにタイミングをズラし重ねることで音に揺らぎを与えるプラグインです。
ほんのりかけることで音の存在感・立体感が増したり、左右に広がったり、複数人で歌っているかのような演出ができるエフェクトですが、歌配信以外の配信ではほとんど出番はないでしょう。
Multiply – Acon Digital
Multiplyは機能が豊富で細部まで音作りができる無料のコーラスプラグインです。
幅広く音作りができるのでコーラスプラグインが欲しいときはとりあえずコレを入れておけば良いと思います。
個人的に特にすごいと感じたのがエフェクトをかけた音のみに適応できるイコライザーが付いてる点で、この機能は結構珍しいんじゃないかなと思います。
音は良いですがガッツリかけると不自然さが目立つかなと。
プリセット(すぐにそれっぽい設定を呼び出せる)機能もついているので、細かなパラメーターの操作ができるか不安といった方も安心して使えます。
扱いの簡単さ | |
音の良さ | |
音作りの幅 | |
おすすめ度 |
まとめ
今回紹介したコンプレッサー以外のプラグインは全てOBSに標準搭載されていないエフェクトで、ものによっては出番は少ないと思いますが配信・動画制作の幅を広げるアイテムとしてはどれもかなり優秀だと思います。
とくにリバーブやコンプレッサー類は出番が多いのでどれか一つ持っておくといいでしょう。(コンプレッサーはOBSの最初から入っていますが、OBSのものはパッと見どれくらい効果が効いてるのか分かりづらいので、別のコンプレッサーを持っておくと便利だと思います。)
今回紹介したのは無料プラグインだけですが世の中には有料プラグインも多数あります。
ただ、大抵のものは配信用途ではなく音楽制作用として開発されているので、配信用途で使うとポテンシャルが引き出せないため割高な製品が多いです。
なのでまずは無料プラグインを試してみてから必要性を感じたものだけ有料プラグインに変更していくのが良いと思います。
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