はじめまして、趣味で作編曲やMIXをしている鳴滝姫雄といいます。
歌ってみた動画を出すにあたって必須となる録音ソフトですが、初めての方はどれを使えば良いのか、うまく出来るかなど不安なことがたくさんあると思います。
そこでこの記事では歌ってみたの音声収録に向いているオススメ録音ソフトをご紹介したいと思います。
僕自身歌の収録をしたりMIXの依頼を受けたりした経験があるので、両方の視点から考えてオススメできるソフトを紹介しています。
ここで紹介する録音ソフトはすべて無料で使えますし、必要最低限以上の機能が備わっているので安心して使用できます。
※この記事はPCで録音する方に向けての記事です。スマホを使って録音する予定の方は対象外ですのでご了承ください。
歌ってみたの録音に必要な機材
歌ってみたを出すにあたって、ピッチ補正や動画制作は依頼して人にやってもらうこともできますが、スタジオを借りたりしないかぎり基本は自分で録音することになります。
なので、録音に必要な機材なんかも自分で揃える必要があります。
ツール名 | 必要性 | 備考 |
---|---|---|
PC | 必要 | |
マイク | 必要 | |
録音ソフト | 必要 | |
オーディオインターフェイス | マイクによっては必要 | マイクがUSB端子のものなら不要 マイクがXLR端子のものなら必要 |
マイクケーブル | ない場合は必要 | マイクがUSB端子のものなら不要 マイクがXLR端子のものなら必要 (マイクによっては購入時に付いてくることも) |
マイクスタンド | ない場合は必要 | 自立して立たない場合は必要 |
ショックマウント | 任意 | あると一部のノイズにめちゃくちゃ強くなる |
ポップガード | 任意 | あると息の音が入りにくくなる |
これだけのものを用意する必要があるわけですが、録音ソフト以外全てお金がかかってしまいます。
録音ソフトも有料のものだと平気で1万円を超えたりするので、実は一番コストを抑えられる部分でもあったりします。
とはいえ、機能が悪いものや音質がイマイチなものは避けたいですよね。
ではどういう機能が付いていれば歌ってみたの録音ソフトとして役目を果たせるのか、次の項目で確認していきましょう。
※機材ではありませんが、歌ってみたを録音する際に【オフボーカル音源】も用意することになると思います。
本家の音源をそのまま使ったり『ボーカル抽出アプリ』などで加工して使うと著作権違反になることもあるので気をつけてくださいね。
録音ソフトを選ぶ基準
音声の録音ができるソフトは色々ありますが、単に録音が出来たら良いというものではありません。
実はちゃんと録音ができるソフトの中にも『歌ってみた向き』のものとそうでないものに分かれます。
歌ってみた向きかどうかを判断する上で確認したい項目は以下の通りです。
・頭出しができるか
・ソフトの使用者が多いか
・トラック数の上限
・外部プラグインを追加できるか
この項目を見ると「あれ?音質は気にしなくて良いの?」と思うかもしれませんが、音質はどれも大差ないので気にする必要はありません。
頭出し機能は録音ができる”だけ”のソフトには搭載されていないことが多いので、基本はDAWと呼ばれる『作編曲・録音・MIX』など幅広い音楽制作が行えるソフトで録音するのが好ましいです。
頭出しができるか
人にMIXを依頼する場合、この機能が付いてるかがかなり重要になります。
頭出しとは、データを書き出すときにオフボーカル音源に対しボーカルやコーラス、合いの手などの尺を合わせる機能のことです。
たとえばイントロが10秒で11秒目からボーカルが歌い出す曲があったとします。頭出しされたボーカルのデータは冒頭10秒間に無音が入るのに対し、頭出しされてないデータだと1秒目から歌が再生されてしまうのです。
つまり頭出しがされてない場合、MIX担当者はタイミングを合わせる作業が増えてしまいます。
「お金払ってんだからそのくらいやってくれ」って思う人も中にはいるでしょう。
ただ音楽は100分の1秒ズレたりすると素人でも「なんとなく録った時とノリが変わっちゃって違和感あるなぁ」って感じることもあるシビアな世界なんです。
ノリから生じる違和感はMIX担当者のリズム感とは別の問題なので依頼者にしか分かりません。
それが原因となってリテイクが無限に発生することもあるので、『頭出しされてない場合はお断り』としているMIX師の方もいらっしゃいます。
頭出しによるリテイクは追加料金が発生したり納期が延びたりと歌い手側にもメリットはないので、頭出しができるソフトを使って録音するようにしましょう。
なんといっても、歌い手側による頭出しはめちゃくちゃ簡単なので!!
ソフトの使用者が多いか
ソフトの使用者が多いかどうかは『歌ってみた向き』かどうかに関わる訳ではありませんが録音を円滑に進める上でかなり重要となる項目です。
録音ソフトはどれもいろんな機能が付いているので操作が複雑です。そのため基本は調べながら録音することになると思います。
使用者が多いとソフトの使い方もネットでたくさん出てきますし、歌ってみたの録音方法を実践しながら説明している動画なんかもアップされていたりします。
マイナーな編集ソフトはそういった情報が少なかったり、英語の情報しか出てこなかったりするので使用者の多さは重要です。
トラック数の上限
トラックの概念を説明するのが難しいのですが、イラストソフトや写真編集ソフトでいうところのレイヤーの概念に近いですね。
音楽はたいてい複数の楽器や録音データによって作られています。
歌ってみたの場合だとオフボーカル音源・メインボーカル・コーラス・合いの手みたいな感じですね。
たとえば「YEAH!」とかの合いの手がメインボーカルと被ってる歌を録る場合、2トラック使うことになります。
同時に入る合いの手が多いとその分トラックも多くなるということですね。
とはいえ、たいていの楽曲の場合歌ってみたでは30もあれば十分ですし、そのくらいならほとんどの録音ソフトが対応してるのであまり気にしなくても良いと思います。
外部のプラグインを追加できるか
自分でピッチ補正まで完璧に熟せるようになりたいと思ってる場合は外部プラグインが追加できるかどうかもチェックしておきたい項目ですね。
プラグインというのは録音ソフトを拡張するためのツールのことで、ゲームでいうところのDLCとかmodに近いものです。
無料録音ソフトには基本ピッチ補正ツールが付いていないので自分で用意することになります。ピッチ補正のプラグインをPCにインストールして録音ソフトで立ち上げて使います。
つまり『自分でインストールしたプラグインにアクセスできる機能』がついてる録音ソフトでないと自分でピッチ補正はできません。
逆にMIXを誰かに依頼するのであればこの機能は必要ありません。
おすすめ無料録音ソフト4選
さて、いよいよ本題です。
【録音ソフトを選ぶ基準】で紹介したチェック項目がどのくらい備わっているかと、それ以外の注意点やオススメポイントなんかを説明しながらソフトを紹介していきます。
Studio One Prime
こちらは今回紹介する中で最もオススメのソフトです。
『Studio One』シリーズは『PreSonus』が開発した作編曲・録音・編集・MIXなど幅広い音楽制作ができるソフトウェアです。
Studio Oneには3つのラインナップがあり、
定価4万円超えでフラッグシップの『Studio One Professional』
定価1万円超えミドルクラスの『Studio One Artist』
そして無償版の『Studio One Prime』です。
ArtistとPrimeはProfessionalより使える機能が制限されてますが、Professionalはプロの作編曲家や音楽プロデューサーも使用しているようなソフトでありPrimeも品質がかなり良いです。
機能が制限されているといっても歌ってみたの録音とちょっとした編集だけなら十分です。
本格的な作曲もしてみたいと思っているならいずれ上位版にアップグレードするか、別のソフトに乗り換える必要が出てきます。
国内大級級のDTMスクールSleepfleaksが約7500名を対象に行った『使用している作曲ソフト』ランキングではユーザー数第3位(25%)という結果でユーザー数もかなり多いソフトと言えます。
MIXを依頼する場合は必要ありませんが、イコライザーやリバーブ、コンプレッサーなどのエフェクトが一通り揃っているのもポイントですね。
自分で本格的なMIXの練習もするならPrimeでは難しいですが、人に依頼するなら歌ってみたを初めて録る人にもオススメできるソフトです。
頭出しができるか | 可能 |
ソフトの使用者が多いか | 多い |
トラック数の上限 | 無制限 |
外部プラグインを追加できるか | 追加不可 |
その他 | 無料アカウント登録必須 |
Cakewalk by BandLab
こちらはもともと『SONAR』という名前で5万円程度で販売されていたソフトでしたが、親会社の経営がうまくいかず開発打ち切りに、その後別企業が買収して『Cakewalk by BandLab』という名前に変わりフリーソフトになりました。
SONARと違う部分も少しありますが、土台となる部分は5万円で販売されていたソフトなだけあって機能・質ともにトップクラスです。機能に制限がないので現在無料で使えるソフトの中では間違いなく一番優秀です。
Cakewalk by BandLabでは作編曲・録音・編集・MIXなど幅広い音楽制作ができます。
最初から入ってる楽器やエフェクトの種類はStudio One Primeより豊富なので、初めての作曲に挑戦することだってできちゃいます。※Studio One Primeでも一応作曲はできるが楽器の種類が少ない。
外部プラグインが追加できるので、楽器やエフェクトを後から追加することも可能です。
ただ一つ欠点があって、Windows版しかありません。
なのでMacユーザーは選択肢から外れてしまいます。
しばらく音楽制作ソフトにお金をかけたくない方は迷わずこのソフトで良いと思います。
Studio One Primeと同じくらいオススメのソフトですが、機能制限がない点が初心者にとっては吉と出るか凶と出るかといったところです。
頭出しができるか | 可能 |
ソフトの使用者が多いか | そこそこ多い |
トラック数の上限 | 無制限 |
外部プラグインを追加できるか | 可能 |
その他 | 無料アカウント登録必須、Mac非対応 |
REAPER
Cockosによって開発された作編曲・録音・編集・MIXなどの音楽制作ができるソフトウェアで、2006年にリリースされたβ版であるv0.999が今もなお完全無料で使えます。それ以降のバージョン有料となっていますが、2022年に入っても更新され続けており30日間のお試し無料期間が設けられています。
有料版といっても60ドルと本格的な音楽制作ソフトとしてはかなりの安価です。※他ソフトはミドルクラスのものでも大抵1万円を超えるので。
v0.999(無料)に関しては現行バージョンに比べ機能が少なかったりするものの、歌を録音するだけならなんの問題もありません。ただ細かいバグは残ってるようですね。
イコライザーやリバーブ、コンプレッサーなどのエフェクトが一通り揃っているのでMIXを依頼する場合は必要ありませんが、自分で音声を加工することも可能です。またこういったVSTプラグインの追加もできるようです。
言語は英語にしか対応していませんが、非公式の日本語化パッチが出回っています。
無料で使える音楽制作ソフトとして広く知れ渡っているソフトですが、この記事で紹介しているソフトの中では恐らくもっとも使用者は少ないです。とはいえ長い期間親しまれてきたのでググればたくさんの情報が出てきます。
頭出しができるか | 可能 |
ソフトの使用者が多いか | 今はやや少ない |
トラック数の上限 | 無制限 |
外部プラグインを追加できるか | 可能 |
その他 | 日本語化にはパッチ必須 |
Garageband
Appleによって開発された作編曲・録音・編集・MIXなどの音楽制作ができるMac用のソフトウェアで、同名のアプリがiPhoneにも入っているので名前を知っている方も多いのではないかと思います。
iPhone版のGaragebandしか知らない人からするとあまり大したソフトに感じないかもしれませんが、Mac版GaragebandはiOS版に比べ機能が豊富なので本格的な録音や音楽制作が可能です。
また、プロの愛用者も多くGaragebandとほぼ同じ操作で使用できる上位互換ソフトLogic Proもあるので、有料ではありますが物足りなくなったらグレードアップすることも可能です。
Logic Proは他の有料音楽ソフトに比べ安い上に優秀なピッチ編集機能もあるのでMIXも自分でやりたい方にとってはもってこいだったりします。
といっても、MIXを人に依頼するならGaragebandの機能だけで十分です。
イコライザーやリバーブ、コンプレッサーなどのエフェクトが一通り揃っているのでMIXを依頼する場合は必要ありませんが、自分で音声を加工することも可能です。また、プラグインの追加も可能です。
ソフトの使用者は多いですがiOS版と同じ名前のせいで使い方をググるとiOS版Mac版両方の情報が混在して検索されてしまいます。個人的にはその点が少し煩わしく感じてしまいました。
トラック数に上限がありますが、歌ってみたの場合30トラック使えればほぼ確実に足りるので全く問題ないと思います。
無料ソフトとして申し分ないので、Macユーザーの方は迷わずこのソフトで良いでしょう。
Cakewalk by BandLabよりは制限がありますがStudio One Primeよりは機能が豊富だと思います。
頭出しができるか | 可能 |
ソフトの使用者が多いか | 多い |
トラック数の上限 | 255 |
外部プラグインを追加できるか | 可能 |
その他 | Windows非対応 |
歌ってみた向きではないソフト
逆に録音機能がついてるけど実は歌ってみた向きではないソフトについても少し触れておこうと思います。
Audacityなんかは無料の録音ソフトの中でもかなり有名なので、歌ってみたでオススメの無料録音ソフトとして紹介している方もいます。
ですが、頭出しが出来ないという決定的な弱点があるのでオススメできません。
SoundEngineやOBS Studioも頭出しできません。というかOBSに関してはそもそも録画ソフトなので録音をサポートするような機能や音声編集の機能も付いていませんし、なんなら音質も悪いです。
無料で使える有力な録音ソフトが増えてきたのでAudacityやSoundEngineで出来ることは大抵他のソフトでもできるようになってしまいました。
それでも簡易的に録音したり編集したい場面では今でも活躍するソフトだと思います。ボーカルレコーディングには向かないというだけで…
レコーディング用ではなくボイスレコーダー的な使い方であったり、オーディオデータを短く編集したり、オーディオデータそのものにループ再生するための情報を付ける時は大活躍するでしょう。
ソフトがオーディオインターフェイスに付属する場合も
もしオーディオインターフェイスを買うのであれば、オーディオインターフェイスに録音ソフトが付属することがあります。
例えば、SteinbergのUR22mkIIという1万5千円ほどのオーディオインターフェイスには、国内シェア率トップクラスの有料ソフト『Cubase』シリーズの下位グレードである『Cubase AI』が付属します。
他にも、PRESONUSのStudio 24cという2万円ほどのオーディオインターフェイスには、この記事でおすすめの無料ソフトとして紹介しているStudio One Primeの上位グレードStudio One Artist(1万円ほど)が付属するので、録音ソフトを持ってない人からすると実質1万円でオーディオインターフェイスが買えます。
こういったソフトは無料ソフトよりも優秀だったりしますし、付属品の良し悪しでオーディオインターフェイスを選ぶのもアリだと思います。
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